地域の子らとサケの放流活動(2018年)





1.活動のあらまし
私の住んでいる地区を流れる桜川には、秋になるとサケが遡ってきます。桜川は、水戸市と笠間市の境にある朝房山(201m)を源に、水戸市街地を流れ那珂川に合流します。この桜川に、平成24年から地域の子どもたちとサケの稚魚を放流する活動を続けております。
最初は学区内の小学校(見川小学校)に呼びかけました。『川に生息する生物に着目し、生物を育てることと、生息環境を調べることで自然を愛する心を育てることができる』と快く受け入れていただきました。
したがって当初は、サケの発眼卵を学区の小学校に提供し、児童たちによって孵化・生育された稚魚を地域の皆さんが応援する形で放流活動をしていました。発眼卵の孵化 → 仔魚の育成 → 稚魚の放流までの学習は、小学校でのウサギやニワトリなどの小動物の世話や生育学習と異なり、児童たちにとって初めての経験となりました。世話をする途中で死んでしまう命もあり、泣いて悲しむ場面などもあり、児童たちにとても貴重な経験をもたらしにものと思われます。
ところが、放流する桜川はゴミも多く、サケが遡るといっても水質はあまり良くありません。当然生育環境としてはCクラスと言えます。児童たちにとって、河川の悪環境はインパクトが大きかったようで「水戸の川がもっとキレイになって欲しい」と作文をまとめ、私共へ「地域の人も一緒に育て、皆で放流しましょう。河川がキレイになるよう清掃活動もしましょう」と逆提案をしてきました。これに応える形で3年目からは幼稚園や市民センター、地域の有志などが協力者として加わり、地域コミュニティと学校教育の協働活動で行われるようになりました。
平成30年には、12月初旬久慈川漁協より発眼卵を譲り受け、協力者によって3か月大事に育てられた稚魚を持ち寄り、3月2日に約50人の手で桜川に放流し、「大きくなって帰ってきてね」と声をかけて見送りました。放流のあとは参加者全員で付近の清掃活動を行いました。
2.生育から放流まで
この活動の発端は釣り好き仲間(アユの友釣同好会)が、子どもたちと交流できればと、地域の小学校に“サケの育成”を呼びかけスタートしました。桜川は、外来魚をはじめ他生物の放流を禁じており、国交省などとの折衝を小学校側が行いました。また、ごみ等の放置物が多く水質の適否が懸念されましたが、BODの調査なども行い水質的に問題ないことを確かめ、放流OKとなりました。後に児童たちから、河川清掃や環境整備などについて地域コミュニティへの逆提案があるなど、学習効果が表れています。
発眼卵は、久慈川漁協より毎年1,000粒以上を求めていましたが、平成29年だけは親魚の不漁で一時断念せざるを得ないかと思われました。学校や児童達の強い希望が叶い、約800粒の発眼卵を入手でき、活動を続けることが出来ました。
配布にあたって、水槽、エアーポンプ、餌など飼育に必要な資材を用意いたただけること、3月上旬の放流時に放流場所まで稚魚を持参できることなどを協力者の条件としました。毎年12月上旬に、見川小学校(児童個人も含む)、見川幼稚園、地区市民センター、個人有志などに配布し、別々の場所で育てられています。個人協力者の水槽は40×25×30㎝(約30リッター)ほどで、1水槽あたり50粒程を分けました。卵を見ると「タッタこれだけ」と協力者はもっと欲しがっていましたが、飼育数が少ないと個体が大きく育つことが判り、後で納得していただています。
発眼卵配布の際、初めての参加者でも孵化と育成ができるよう、別紙レジュメ『サケの育成と放流まで』を配布しました。協力者の中には何回も経験を積んだ方が居り、生存率は大変良く70%を超えるようになりました。皆で育てた稚魚を持ち寄り、今回は3月2日に放流することが出来ました。
放流のあとは、付近の清掃を全員で行い河川環境の浄化につとめています。
釣り好き仲間の提案で始めた活動はしっかり根をおろし、地域コミュニティと学校教育の協働活動へと発展できたと考えています。今後、《魚》と《釣り》に興味を持つ大勢の子供たちによって、釣技と釣環境が守られてゆくことを願っています。
角田恒巳